映画

「戦争-映画」論序説、あるいは『最前線物語』について

戦争映画が実際の戦争に「似る」ことと、ある個人が戦争の「記憶」を戦争映画に投影することとの距離について考えるならば、それは戦争ではなく映画を巡ったものになる。というよりも、何かが何かに「似る」という現象自体、「記憶」に補完されたものである…

『アンストッパブル』(トニー・スコット、2010)

作業員の慢心によるミスから動き出した無人の貨物車両は慣性によってその速度を上げ、自らが発する力のみを頼りに毎時60マイルで走り続ける。その身を閃光に曝し、焦がれることで存在を現すには、いささか鈍重な身体を携えてはいるが、列車が列車自身の力の…

『非常線の女』(小津安二郎、1933)

田中絹代は劇中、三度拳銃を手にする。その銃口が火を噴くのは無論三度目においてであるが、田中絹代がタイプを打ち、また岡譲二のオフィスにおいて帽子が落ちるのは二度である。『非常線の女』における「三度目の偶然」が我々にとっての異様な事態を招くこ…