『アンストッパブル』(トニー・スコット、2010)

作業員の慢心によるミスから動き出した無人の貨物車両は慣性によってその速度を上げ、自らが発する力のみを頼りに毎時60マイルで走り続ける。その身を閃光に曝し、焦がれることで存在を現すには、いささか鈍重な身体を携えてはいるが、列車が列車自身の力のみによって動かなければならない理由は、フィルムがスクリーンに映写されねばならない理由と寸分も違うところがない。ただ一か所だけインサートされる、鉄道会社幹部のゴルフのカットにこそ驚きを禁じ得ないものの、トニー・スコットのクロノスは、映画における説話論的構造に積極的にその身を投げ出すものだ。無人のプールへダイヴする快楽については、言うまでもない。