ソーシャル化するブログばれ

●ブログというのは誰に読まれているか解りません。
「その通りです」
はてなキーワードで辿ればそりゃ一発でしょう。
「自分の授業に出てる学生だったらそりゃねえ」
●泳がされてたし。
「同じ授業の女の子も読んでたって。つーか言っときますけど、これ別に誰に読まれても困る内容じゃないからね。2005年頃にやってたやつならまだしも。別に読まれてたから最悪だとか1ナノシーベルトも思ってないから、まじで」
●そんなんだったらやるなよって話だから本当。
「先生、今後も読んでくださいね〜」
●授業のまとめ上げないと読んでくれないんじゃないの?
「まじか。じゃあ後期は『グローバル化社会学』に潜って、毎月『Life』の感想を2万字……」
●で、同語反復っぽいタイトルだが。やっぱり突然「ブログ読んでます」とか「ツイッター見てます」って言われた時のあの何とも言えなさと、我々は一体いつまで付き合っていかなければならないのだろうか。全然いいんだけどさ。
「もうだいぶ無くなってきてはいるけどね。とは言ってもね。って話だよね」
●誰もが「いや、あれは……」って言い訳がましくなるじゃん。
「俺はもうかなり無いけどね。とは言ってもね。って話だよね」
ナンシー関だったら「この妙な恥ずかしさが無くならない限り、ソーシャル化は日本人の見果てぬ夢である」とか言いそうな。
「その恥ずかしさってどれぐらいのグラデーションなんだろうか。mixiボイスとツイッターmixi日記とアメブロのどこにキャズムが存在するのか」
●その4つでいくとどこにも無い気がする。
「『アメブロ見たけど風邪大丈夫?』という会話がなされている?」
●でしょう。
「本当にここ半年ぐらいの実感なんだけど、mixiツイッター或いはフェイスブック的なものの垣根が無くなっている気がするのだが」
●ギャル仕様のスマートフォンもいっぱい出てるし。
スマートフォンの普及は『下流』とかああいう概念を根こそぎ駆逐するのではないか」
●じゃあソーシャル化ってものを今後日本人は急速に体得していくのか。
「それは言いすぎだ。こんなことをダラダラ喋っていては先生に怒られるのでまとめるが、正月の朝生の東Vs.細野を引くまでもなく、ウェブというのは我々にとって紛れもない『現実の社会』であるわけで、二極分化が無効になればソーシャル化が実現されるのかと言えばそれは全く違う。ソーシャル化とはキュレーションに並ぶ謎の言葉である。ソーシャル化が何か解らないのにその実現は不可能である」
●……。
「ソーシャル化というのは端的に言えば、旧来『現実世界』と呼ばれていたものが、旧来『ネット社会』と呼ばれていたものの論理で再編成される社会のことを指すのだろう。だから二つの垣根が払われることがイコール・ソーシャル化では全くない。その意味において我々はまだソーシャル化を果たしてはいない」
●インターネットの論理って?
「お前は春学期の『インターネットの社会学』を受けていなかったのか!?」
●……。
「2009年の講義の頭何回かはニコ動に上がってるよ。俺その時受けてて、『チャーリーが切れる』のタグの回も出席してたぞ」
●…………。
「インターネットの論理に『並列化』というものがある。……古い話ではあるが、インターネットは距離と時間を無効化する。これはきわめて反ハリウッド的な論理なわけだが、例えば『ソーシャル・ネットワーク』なんかを観ると確かにこれは徹底的に遅延された物語であると感じる。あれは、表層しか存在しないPCのウィンドウ(全っっっっ然関係ない話で申し訳ないが、宇多田ヒカルの"Automatic"には『Computer Screen』という、恐らく今では存在しない単語が出てくる)の前で、登場人物の関係も(『フラット化』ではなく)『並列化』していく、という論理が作中ずっと貫かれていて(そもそも映画は、示談からのフラッシュバックとしてほぼ全編描かれている)、何も解決されないまま、個々人の世界と関係性が最後まで交わらずに終わるという、前代未聞と言っていい映画だ。インターネットの論理とは『マトリックス』のことではない。『語り』の構造が、人物を統一的全体に纏め上げることのない論理のことだ」
ゴダール
ゴダールとは少し違う。ゴダールについて述べるには卒業論文以上のものが必要だ。だから『ソーシャル・ネットワーク』を『ザッカーバーグの孤独』とかいった論調で語るのは愚の骨頂なのだ。フィンチャーが今作で得た『語り』の構造とはそんなやわなものではないのだ」
●そこから帰納されるものが「ソーシャル化」ってこと?
「わかりません」
●…………。
「でも『ソーシャル・ネットワーク』に『共感した』って人、いっぱいいるでしょ? そういうことなんじゃないかと思うんだよ。それは別に従来のナードとかギークに限らず。あれほど共同体内部で何も起こっていないのに、それが機能不全を起こしている作品はないよ」
●ところでインタミ飲みはどうだったんですか?
「楽しかった」
●非社交のくせに酒飲むと調子こくからな。
「『色々手遅れ感が』って言われたよ」
●その通りだ。
「あと『“哀愁でいと”の元ネタはディスコの名曲"New York City Night"だ』って喋ってた記憶もある。何だあれ」
●取り敢えず7月の授業のまとめを上げようか。
「はい」
●そしてもう二度とこの形式での記事は上げられなかった…………!!